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国際社会における動き

拉致問題に対する国際的関心の高まり

 

写真:ムンタボーン特別報告者

  • 1.北朝鮮による日本人の拉致は、人間の尊厳、人権及び基本的自由の重大かつ明白な侵害である。国連人権理事会においては、これまで3年連続3 回(前身の人権委員会から数えると6回)、北朝鮮の人権状況に関する決議が採択されてきている。同決議に基づき任命される国連北朝鮮人権状況特別報告者は、平成17年以降、毎年、数次にわたる我が国への訪問結果も踏まえ、国連人権委員会(平成18年からは国連人権理事会)及び国連総会第3委員会に報告を行っており、平成22年の報告では、前年と同様、北朝鮮が拉致問題の解決に向けた効果的な協力を早急に行うべきであると勧告している。平成22年8月には、ムンタボー ン前特別報告者の後任として、マルズキ・ダルスマン特別報告者が就任した。

  • 2.上記人権理事会決議に加え、平成17年12月には初めて国連総会本会議で北朝鮮人権状況決議が採択され、以後、6年連続で賛成多数により採択されている。国連総会決議は、我が国とEUが共同で提出しているもので、外国人の拉致問題を含め北朝鮮の人権状況に深刻な懸念を表明し、北朝鮮当局に対し、拉致被害者の即時帰国を含め、問題を早急に解決することを強く要求している。(平成22年の同決議の共同提案国は52カ国で、韓国は平成20年より毎年共同提案国に加わっている。)これらの一連の決議案の採決に当たっては、本件決議案に賛成票は投じなくても拉致問題に対する北朝鮮の対応についての懸念を表明する国も多数あった(ベトナム、ブラジル、インド、マレーシア等)。

      さらに、平成21年12月、人権理事会の普遍的・定期的レビュー(UPR)作業部会において、北朝鮮の人権状況に関する審査が行われ、拉致問題を含めた北朝鮮の人権状況についての我が国ほか各国からの懸念や勧告を記載した報告書が採択された。

    3.日本人以外の拉致被害者についても内外の関心が高まっている。韓国政府は、朝鮮戦争後に4,000名近い韓国人が北朝鮮により拉致され、そのうち約500名が未帰還であるとしており(注)、また、朝鮮戦争中にも約10万 名が拉致されたとして、現在、真相究明を進めている。さらに、日本へ帰国した 拉致被害者などの証言で、タイ、ルーマニア、レバノンでも北朝鮮に拉致された可能性のある者が存在することが明らかになった。このほか、北朝鮮から帰還した韓国人拉致被害者などの証言では、中国人などの拉致被害者も存在するとされている。こうしたことを受け、 関係各国の家族間や民間団体間で連携が行われており、政府レベルでも、関係各国との間で、情報交換を含め緊密な連携を行っている。
     なお、韓国人拉致被害者の中には、日本人拉致被害者と結婚したとみられるケースもある。平成18年5月、横田めぐみさんの夫が韓国人拉致被害者金英男氏である可能性が高いことが判明したほか、田口八重子さんについても、韓国人拉致被害者と結婚した可能性も排除できないことから、政府として鋭意調査を進めている。

    (注)このなかには、米国永住権を有している韓国人宣教師キム・ドンシク氏(2000年拉致)も含まれている。同事案について、オバマ大統領は、2008年10月(大統領候補者当時)、テロ支援国家指定解除に関し発表した声明の中で、「北朝鮮は、日本人並びに韓国人、そしてキム・ドンシク牧師の拉致に関する全ての問題を解決しなければならない」としている。

我が国外交上の取組

 
  • 1.日本政府は、前記の国連総会や人権理事会の他にも、サミット等の各種国際会議、首脳会談等あらゆる外交上の機会を捉え拉致問題を提起し、諸外国からの理解と支持を得てきている。例えば、平成22年6月のムスコカサミットにおいては、我が国より拉致問題についてG8各国の理解と協力を求め、首脳宣言では、北朝鮮が拉致問題を含む人道上の問題に対する国際社会の懸念に直ちに取り組むことを要請するとの文言が明記された(G8の首脳宣言において拉致問題が明示的に言及されたのは平成20年の北海道洞爺湖サミット以来3年連続。なお、G8では、平成15年のエビアンサミット以来継続して、議長総括などの文書で拉致問題を取り上げている。)。

     また、二国間首脳会談では、例えば米国からは、従来より、拉致問題における日本の立場に対し理解と協力の姿勢が示されている。特に、オバマ大統領は、平成21年4月東京での演説において「北朝鮮と近隣諸国との完全な国交正常化は、日本人の被害者家族が拉致被害者に関する十分な説明を受けることが前提となる」旨述べており、また、クリントン国務長官も、同年2月の拉致被害者御家族との面会の際に、「拉致問題は米国としても優先すべき問題と理解している」と述べている。韓国については、李明博大統領より、これまで累次にわたり、拉致問題について可能な限りの協力と支持が表明されている。特に平成22年6月の日韓首脳会談では、李大統領より「拉致問題は人権問題として取り組む課題であり、日韓で引き続き協力していきたい」との発言があった。このほか、中国の胡錦濤国家主席やロシアのメドヴェージェフ大統領からも拉致問題に対する理解が示されている。

  • 2.また、平成17年9月に採択された六者会合の共同声明にも、拉致問題を含めた懸案事項が解決されない限り北朝鮮との国交正常化はないという我が国の基本的立場を踏まえ、不幸な過去を清算し、拉致問題を含めた懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとることが、同会合の目標の一つとして位置づけられた。これを受け、平成19年2月の六者会合においては、非核化等と並んで、日朝国交正常化のための作業部会も設立された。更に、同年9月の六者会合においては、日朝関係について、日朝双方が具体的行動を実施していくことも合意され、10月3日に発表された成果文書に明記された。

     なお、六者会合においては、北朝鮮が非核化措置を実施することとあわせ、北朝鮮に対して経済・エネルギー支援が実施されることとなっているが、我が国は、拉致問題に進展が見られない限り、六者会合における北朝鮮へのエネルギー供与には参加しないとの立場をとっている。

  • 3.上記のとおり、拉致問題解決の重要性とそのための日本政府の取組みは、国際社会の明確な理解と支持を得ている。拉致問題の解決に向けた北朝鮮側の決断を促していくためには、国際社会の理解と協力が不可欠であるとの観点から、日本政府は、今後とも、拉致問題における国際社会との連携を積極的に推進していく考えである。