北朝鮮による拉致問題とは

北朝鮮による拉致問題とは

1.北朝鮮による日本人拉致問題

 1970年代から1980年代にかけ、多くの日本人が不自然な形で行方不明となった。日本の当局による捜査や、亡命北朝鮮工作員の証言により、これらの事件の多くは北朝鮮による拉致の疑いが濃厚であることが明らかになった。1991年以来、政府は、機会あるごとに北朝鮮に対して拉致問題を提起したが、北朝鮮側は頑なに否定し続けた。しかし、北朝鮮は、2002年9月の第1回日朝首脳会談において、ようやく初めて拉致を認め、謝罪し、再発防止を約束した。同年10月には、5人の拉致被害者が24年ぶりに帰国した。

 しかしながら、残りの安否不明の方々については、2004年5月の第2回日朝首脳会談において、北朝鮮側から、直ちに真相究明のための徹底した調査を再開する旨の明言があったにもかかわらず、未だに北朝鮮当局から納得のいく説明がなされていない。残された被害者たちは、今なお全ての自由を奪われ、長きにわたり北朝鮮に囚われたままの状態で、現在も救出を待っている。

 日本国内では、1997年に拉致被害者の御家族により「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)」が結成されるなど、被害者の救出を求める運動が活発に展開され、2018年10月現在で1200万筆を超える署名が総理大臣に提出されている。

 北朝鮮による拉致問題は、我が国の主権及び国民の生命と安全に関わる重大な問題であり、国の責任において解決すべき喫緊の重要課題である。 日本政府は、これまでに、帰国した5名を含む17名を北朝鮮当局による拉致被害者として認定しているが、この他にも、日本国内における日本人以外(朝鮮籍)の拉致容疑事案や、いわゆる特定失踪者(注)も含め拉致の可能性を排除できない事案がある。日本政府としては、北朝鮮側から納得のいく説明や証拠の提示がない以上、安否不明の拉致被害者は全て生存しているとの前提に立ち、引き続き、拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために全力を尽くす。また、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引渡しを引き続き追求していく。政府としては、引き続き、日朝平壌宣言にのっとり、全ての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現し、「不幸な過去」を清算して国交正常化を実現すべく全力で取り組んでいく。

(注)特定失踪者についてはこちらをご覧ください。


北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(「家族会」)の結成

2.拉致問題をめぐる日朝間のやりとり


1. 第1回日朝首脳会談(2002年9月)

 2002年9月17日の第1回日朝首脳会談において、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)国防委員長は、長年否定していた日本人の拉致を初めて認めて謝罪し、当時日本政府が認定していた拉致被害者13名のうち4名は生存、8名は死亡、1名は北朝鮮入境が確認できない旨伝えた(注)。また、日本側が調査依頼をしていなかった曽我ひとみさんについて拉致を認め、その生存を確認した(他方、北朝鮮側は、その後の調査において、同時に行方不明となった母親の曽我ミヨシさんについては、入境の事実はない旨主張した。)。その上で、関係者の処罰及び再発防止を約束すると同時に、家族の面会及び帰国への便宜を保証すると約束した。

 これに対し、小泉純一郎総理は、金正日国防委員長に対し強く抗議し、継続調査、生存者の帰国、再発防止を要求した。

(注)北朝鮮は、地村保志さん、地村富貴惠さん、蓮池薫さん及び蓮池祐木子さんの4名については生存を確認する一方で、横田めぐみさん、田口八重子さん、市川修一さん、増元るみ子さん、石岡亨さん、松木薫さん、原敕晁さん及び有本恵子さんの8名については死亡している、久米裕さんについては未入境である旨伝えた。なお、日本政府は、2003年1月に曽我ミヨシさんを、2005年4月に田中実さんを、2006年11月に松本京子さんを政府認定の拉致被害者として認定している。


第1回日朝首脳会談

2. 事実調査チームの派遣(2002年9月~10月)

 2002年9月28日から10月1日にかけて、政府派遣による事実調査チームが生存者と面会し、安否未確認の方についての情報収集に努めた。しかし、北朝鮮提供の情報がそもそも限られていた上、内容的にも一貫性に欠け、疑わしい点が多々含まれていた。松木薫さんのものと思われるとして提供を受けた「遺骨」については、法医学的鑑定の結果、別人のものであることが確認された。同年10月29日及び30日にクアラルンプールで開催された第12回日朝国交正常化交渉においても、政府は150項目にわたる疑問点を指摘するとともに、更なる情報提供を要求したが、北朝鮮側からのまとまった回答はなかった。

3. 5人の被害者の帰国(2002年10月)

 2002年10月15日、拉致被害者5名(地村保志さん・富貴惠さん、蓮池薫さん・祐木子さん、曽我ひとみさん)が帰国し、家族との再会を果たした。

 日本政府は、帰国した5名の拉致被害者が、北朝鮮に残してきた家族も含めて自由な意思決定を行い得る環境の設定が必要であるとの判断の下、同年10月24日、5名の拉致被害者が日本に引き続き残ること、また、北朝鮮に対して、北朝鮮に残っている家族の安全確保及び帰国日程の早急な確定を強く求める方針を発表した。


24年ぶりの拉致被害者の帰国

4. 第2回日朝首脳会談(2004年5月)

 2004年5月22日、小泉総理が再度訪朝し、金正日国防委員長との間で、拉致問題を始めとする日朝間の問題や、核、ミサイルといった安全保障上の問題等につき議論が行われた。拉致問題に関しては、この会談を通じ、以下の諸点が両首脳間で申し合わされた。

●北朝鮮側は、地村さんの御家族と蓮池さんの御家族の計5名が、同日、日本に帰国することに同意する。
●安否不明の拉致被害者の方々について、北朝鮮側が、直ちに真相究明のための調査を白紙の状態から再開する。

 この申し合わせに基づき、地村さんの御家族と蓮池さんの御家族の計5名は、小泉総理と共に帰国した。また、曽我ひとみさんの御家族3名については、その後7月18日に帰国・来日が実現した。


第2回日朝首脳会談

5. 日朝実務者協議(2004年8月及び9月:北京、同年11月:平壌)

(イ) 2004年8月(第1回)及び9月(第2回)にかけて日朝実務者協議が開催され、北朝鮮側から、安否不明者に関する再調査の途中経過について説明が行われたが、情報の裏付けとなる具体的な証拠や資料は提供されなかった。

(ロ) 2004年11月の第3回協議は50時間余りに及び、北朝鮮側の「調査委員会」との質疑応答の他、合計16名の「証人」からの直接の聴取、拉致に関係する施設等に対する現地視察、横田めぐみさんの「遺骨」とされるもの等の物的証拠の収集が行われた。
 なお、同協議では、日本政府として拉致被害者とは認定していないが北朝鮮に拉致された疑いが排除されない失踪者(特定失踪者等)の問題について、北朝鮮側に対し5名の氏名を示して関連情報の提供を求めたが、北朝鮮側からは、当該5名について入境は確認できなかったとの回答があった。(日本政府は、その後の協議等の場においても、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案に係る関連情報の提供を繰り返し要求してきている。)

(ハ) 日本政府は、第3回協議において北朝鮮側から提示のあった情報及び物的証拠に対する精査を直ちに実施したが、「8名は死亡、2名は入境確認せず(注)」との北朝鮮側の説明を裏付けるものはなかった。また、これまでに提供された情報及び物的証拠には多くの疑問点があり、横田めぐみさんの「遺骨」とされた骨の一部からは、めぐみさんのものとは異なるDNAが検出されたとの鑑定結果を得た。日本政府は、これらの点を北朝鮮側に申し入れ、強く抗議した。

(注)久米裕さん及び曽我ミヨシさんの2名を指す。

6. 日朝包括並行協議(2006年2月:北京)

2006年2月の日朝包括並行協議における拉致問題に関する協議は合計約11時間にわたり、日本側から改めて、生存者の帰国、真相究明を目指した再調査、被疑者の引渡しを強く要求した。これに対し、北朝鮮側は、「生存者は既に全て帰国した」というこれまでと同様の説明を繰り返した。また、真相究明については安否不明者の再調査の継続すら約束せず、被疑者の引渡しは拒否した。

7. 日朝国交正常化のための作業部会(2007年3月:ハノイ、同年9月:ウランバートル)

2007年2月の六者会合で設置が決まった「日朝国交正常化のための作業部会」第1回会合が同年3月に開催された。日本側から、全ての拉致被害者及びその家族の安全確保と速やかな帰国、真相究明、被疑者の引渡しを改めて要求したが、北朝鮮側は、「拉致問題は解決済み」との従来の立場を繰り返すなど、拉致問題の解決に向けた誠意ある対応は示されなかった。9月の第2回会合においても、拉致問題については具体的な進展は得られなかった。

8. 日朝実務者協議(2008年6月:北京、同年8月:瀋陽)

(イ) 2008年6月の日朝実務者協議では、拉致問題に関し、日本側から、全ての拉致被害者の帰国、真相究明、被疑者の引渡しを改めて要求するとともに、北朝鮮側が拉致問題を含む諸懸案の解決に向けた具体的行動をとる場合には、我が国としても現在北朝鮮に対してとっている措置の一部を解除する用意がある旨を改めて説明し、北朝鮮側の具体的行動を要求した。その結果、北朝鮮側は、「拉致問題は解決済み」との従来の立場を変更して、拉致問題の解決に向けた具体的行動を今後とるための再調査を実施することを約束した。

(ロ) 同年8月の協議では、同年6月の協議で双方が表明した措置、特に北朝鮮による拉致問題の調査のやり直しの具体的態様につき、突っ込んだ議論がなされた。その結果、北朝鮮側が、権限が与えられた調査委員会を立ち上げ、全ての拉致被害者を対象として、生存者を発見し帰国させるための全面的な調査を開始すると同時に、日本側も、人的往来の規制解除及び航空チャーター便の規制解除を実施することが合意された。

(ハ) しかし、2008年9月4日、北朝鮮側から、先の日朝協議の合意事項を履行するとの立場であるが、突然日本での政権交代(注:福田総理(当時)の辞任)が行われることになったことを受け、新政権が協議の合意事項にどう対応するかを見極めるまで調査開始は見合わせることとした旨の連絡があった。

9. 日朝政府間協議(2012年11月:ウランバートル)

2012年11月、4年ぶりの北朝鮮との間の協議である日朝政府間協議が開催された。同協議では、拉致問題について突っ込んだ意見交換が行われ、これまでの経緯やそれぞれの考え方についての議論を踏まえた上で、さらなる検討のため今後も協議を継続していくこととなった。また、日本側から、拉致の可能性を排除できない事案についても北朝鮮側に対し提起し、議論を行った。

 第2回目の協議は、12月5日及び6日に開催することが決まったが、同月1日に北朝鮮がミサイル発射を予告したことから、延期せざるを得なくなった。

10. 日朝政府間協議(2014年3月:北京)

2014年3月3日並びに同月19日及び20日に瀋陽で開催された日朝赤十字会談の機会を利用して、1年4か月ぶりに日朝政府間(課長級)で非公式な意見交換を実施し、政府間協議再開を調整することで一致した。

 それを受けて、3月30日及び31日に北京にて開催された日朝政府間協議では、双方が関心を有する幅広い諸懸案について真摯かつ率直な議論を行い、今後も協議を続けていくことで一致した。拉致問題については、これまでの協議の議論を踏まえつつ、日本側の基本的考え方について問題提起を行った。

11. 日朝政府間協議(2014年5月:ストックホルム)

2014年5月にストックホルムにて開催された日朝政府間協議では、北朝鮮側は、拉致被害者を含む全ての日本人に関する包括的かつ全面的な調査の実施を約束した(ストックホルム合意)。日本側としても、北朝鮮側のこうした動きを踏まえ、北朝鮮側が調査のための特別調査委員会を立ち上げ、調査を開始する時点で、我が国独自の対北朝鮮措置の一部を解除することとした。

12. 日朝政府間協議(2014年7月:北京)

2014年7月1日に北京にて開催された日朝政府間協議では、北朝鮮側から、特別調査委員会の組織、構成、責任者等に関する説明があり、日本側からは、この委員会に、全ての機関を対象とした調査を行うことのできる権限が適切に付与されて いるかといった観点から、集中的に質疑等を行った。

7月4日、北朝鮮側は、国営メディアを通じ、特別調査委員会の権限、構成、調査方法等について、日本側の理解と同趣旨の内容を国内外に公表し、拉致被害者を含む全ての日本人に関する調査の開始を発表した。一方日本側は、人的往来の規制措置並びに支払報告及び支払手段等の携帯輸出届出の下限金額の引下げ措置を解除するとともに、人道目的の北朝鮮籍船舶の入港を認めることとした。


日朝政府間協議(2014年7月)

13. 日朝外交当局間会合(2014年9月:瀋陽)

2014年9月29日、北朝鮮から調査の現状について説明を受けることを目的として、日朝外交当局間会合を開催した。同会合では、北朝鮮側から、今の段階では日本人一人ひとりに関する具体的な調査結果を通報することはできないが、日本側が平壌を訪問して特別調査委員会のメンバーと面談すれば調査の現状についてより明確に聴取できるであろうとの説明があった。

14. 特別調査委員会との協議(2014年10月:平壌)

2014年10月に平壌で行われた特別調査委員会との協議では、日本側から、拉致問題が最重要課題であること、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、拉致に関する真相究明並びに拉致実行犯の引渡しが必要であること、政府認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者を発見し、一刻も早く安全に帰国させることを求めていることを繰り返し伝達した。また、調査を迅速に行い、その結果を一刻も早く通報するよう、北朝鮮側に強く求めた。

 北朝鮮側からは、委員会及び支部の構成といった体制や、証人や物証を重視した客観的・科学的な調査を行い、過去の調査結果にこだわることなく新しい角度からくまなく調査を深めていくといった方針について説明があった。また、調査委員会は、北朝鮮の最高指導機関である国防委員会から特別な権限を付与されており、特殊機関に対しても徹底的に調査を行うとの説明があった。拉致問題については、個別に入境の有無、経緯、生活環境等を調査している、被害者が滞在していた招待所跡等の関連場所を改めて調査するとともに、新たな物証・証人等を探す作業を並行して進めているとの説明があった。

15. 北朝鮮による一方的な特別調査委員会の解体宣言(2016年2月)

北朝鮮による2016年1月の核実験及び2月の「人工衛星」と称する弾道ミサイル発射等を受け、同月に日本が独自の対北朝鮮措置の実施を発表したことに対し、北朝鮮は拉致被害者を含む全ての日本人に関する包括的調査の全面中止及び特別調査委員会の解体を一方的に宣言した。日本は北朝鮮に対し厳重に抗議し、ストックホルム合意を破棄する考えはないこと、北朝鮮が同合意に基づき、一日も早く全ての拉致被害者を帰国させるべきことについて、強く要求した。

16. 最近の動き

最近も、我が国は北朝鮮に対して繰り返し我が国の基本的な考えを伝えてきている。例えば、2018年2月、平昌冬季オリンピック競技大会の開会式の際の文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領主催レセプション会場において、安倍総理大臣から金永南(キム・ヨンナム)北朝鮮最高人民会議常任委員長に対し、拉致問題、核・ミサイル問題を取り上げ、日本側の考えを伝えた。特に、全ての拉致被害者の帰国を含め、拉致問題の解決を強く申し入れた。

3.国際社会における取組

拉致問題の解決のためには、我が国が主体的に北朝鮮側に対して強く働きかけることはもちろん、拉致問題解決の重要性について各国からの支持と協力を得ることが不可欠である。政府は、あらゆる外交上の機会をとらえ、拉致問題を提起している。

 北朝鮮による拉致の被害者は、韓国にも多数いることが知られているが、帰国した日本人拉致被害者等の証言から、タイ、ルーマニア、レバノンにも北朝鮮に拉致された可能性のある者が存在することが明らかになっている。このほか、北朝鮮から帰還した韓国人拉致被害者等の証言では、中国人等の拉致被害者も存在するとされている。

 このように、拉致問題は、基本的人権の侵害という国際社会の普遍的問題である。

1. 国際連合

(イ) 国連においては、我が国は、欧州連合(EU)と共同で、北朝鮮人権状況決議を人権理事会と国連総会の双方に提出してきており、人権理事会では11年連続11回、国連総会では13年連続13回採択されている(2018年10月現在)。

(ロ) 2013年3月の人権理事会において、新たに北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)を設置することを含む決議が無投票で採択された。国連調査委員会(COI)は、日本、韓国、米国、英国、タイを訪問するなどして拉致問題を含む北朝鮮の人権状況の調査を行い、2014年2月に最終報告書(COI報告書)を公表した。

(ハ) 2014年3月の人権理事会にて、COI報告書の内容を反映したこれまで以上に強い内容の決議が賛成多数で採択された。同決議は、北朝鮮の広範で深刻な人権侵害を最大限の表現で非難し、北朝鮮に対して、拉致問題を含む、全ての人権侵害を終わらせる手段を早急に取ることを求めている。また、COI報告書の勧告を踏まえ、安保理が人権侵害に責任を負う者に説明責任を果たさせるよう、適切な国際刑事司法メカニズムへの付託を検討することや、COI報告書のフォローアップをしっかり行うための体制の構築などを要請している。

(ニ) 2014年12月、国連総会において、COI報告書及び同年3月の人権理事会における決議の内容を踏まえた、これまで国連総会において採択された北朝鮮人権状況決議よりも強い内容の決議が、過去最多の共同提案国を得て賛成多数で採択された。具体的には、北朝鮮の組織的かつ広範で深刻な人権侵害を非難するとともに、「人道に対する犯罪」に言及し、更に、安保理に対し、北朝鮮の人権状況の国際刑事裁判所(ICC)への付託の検討を含む適切な行動をとるよう促している。

(ホ) その後、北朝鮮人権状況決議に基づき、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)ソウル事務所の設立(2015年6月)、北朝鮮における人権侵害に係る説明責任の問題に重点的に取り組む独立した専門家の指名(2016年9月)、ソウル事務所を含む、OHCHRの能力強化の決定(2017年3月)といった、具体的な取組が進められている。2018年3月に人権理事会において採択された北朝鮮人権状況決議においても、OHCHRの能力強化プロセスの加速が求められている。

(ヘ) 国連安保理においても、2014年12月、人権状況を含む北朝鮮の状況が包括的に議論されて以降、「北朝鮮の状況」に関する国連安保理会合が、4年連続で開催され、我が国から、拉致問題の一刻も早い解決を求めてきている。


国連総会において一般討論演説を行う安倍総理(2018年9月)

2. 六者会合

 我が国は、六者会合においても、拉致問題を取り上げてきており、2005年9月に採択された共同声明においては、拉致問題を含めた諸懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとることが、六者会合の目標の一つとして位置づけられた。これを受けて、2007年2月の成果文書においては、日朝国交正常化のための作業部会の設置が決定され、10月の成果文書においては、日朝双方が、日朝平壌宣言に従って、「不幸な過去」を清算し懸案事項を解決することを基礎として早期に国交を正常化するため誠実に努力すること、また、そのために日朝双方が精力的な協議を通じて具体的な行動を実施していくことが確認された。ここでいう「懸案事項」に拉致問題も含まれていることは、当然である。


六者会合(2007年9月)

3. 多国間の枠組み

 日本政府は、G7サミット、ASEAN関連首脳会合等の多国間の枠組みにおいても、拉致問題を提起しており、拉致問題解決の重要性とそのための政府の取組は、諸外国からの明確な理解と支持を得てきている。

 例えば2018年6月のG7シャルルボワ・サミットでは、安倍総理から拉致問題の即時解決に向けて理解と協力を呼びかけ、G7首脳から支持を得た上で、コミュニケにも明確に盛り込まれた。また、9月の国連総会の際にも、安倍総理の一般討論演説等において、全ての拉致被害者の帰国に向け、各国に対して理解と協力を求めた。


G7シャルルボワ・サミット(2018年6月)


日中韓サミット(2018年5月)


日米韓外相会合(2018年7月)

4. 二国間協議

 我が国は、米国、韓国、中国、ロシアを始めとする各国との首脳会談、外相会談等においても拉致問題を取り上げており、各国から我が国の立場への理解と支持が表明されている。

 例えば、トランプ米国大統領は、2017年11月の訪日の際に、拉致被害者の御家族と面会し、御家族の方々の思いのこもった訴えに熱心に耳を傾け、安倍総理との間で、拉致問題の解決に向けて、日米で引き続き協力していくことで一致した。また、トランプ大統領は、安倍総理からの要請を受け、2018年6月の米朝首脳会談において金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に対して拉致問題を提起したほか、米国は、ポンペオ米国国務長官の訪朝時等、様々な機会に拉致問題を提起している。さらに、韓国についても、2018年4月の南北首脳会談を始めとする累次の機会において、北朝鮮に対して拉致問題を提起している。

 さらに、2018年5月の日中韓サミットにおいては、拉致問題の早期解決に向け、安倍総理から文在寅大統領と李克強(り・こくきょう)国務院総理に支持と協力を呼びかけ、両首脳の理解を得た結果、その成果文書に拉致問題が初めて言及された。さらに、2018年9月の日露首脳会談においても、安倍総理から拉致問題の解決に向けてロシアの協力を呼びかけ、プーチン大統領の理解を得たほか、同月の日中首脳会談においても、拉致問題の早期解決に向けた日本の立場について、習近平(しゅう・きんぺい)国家主席から完全な支持を得た。


トランプ大統領と拉致被害者御家族の面談(2017年11月)


日米首脳会談(2018年4月)


日露首脳会談(2018年9月)


日中首脳会談(2018年9月)


日韓首脳会談(2018年9月)

北朝鮮に拉致された可能性のある米国人に関する決議案

 米国においては、2016年9月、米国議会下院本会議にて、米国政府に対し、北朝鮮に拉致された可能性のある米国人について、日本、中国及び韓国政府と連携して調査を進めるよう求める決議が採択された。2017年3月には、同様の内容の決議案が米国議会上院に提出され、2018年2月に外交委員会で可決された。日本政府として、引き続き米国議会の動向を注視する考えである。

4.国内における取組

1. 「拉致問題対策本部」の設置等

 2013年1月、日本政府は、拉致問題に関する対応を協議し、同問題の解決のための戦略的取組及び総合的対策を推進するため、全ての国務大臣からなる新たな「拉致問題対策本部」を設置した。同対策本部は、総理大臣が本部長を、拉致問題担当大臣、内閣官房長官及び外務大臣が副本部長を務めており、各閣僚は、拉致問題の解決に向け、本部長、副本部長を中心に連携を密にし、それぞれの責任分野において全力を尽くしている。

 また、拉致問題の解決に向けた超党派での取組の強化を図るため、「政府・与野党拉致問題対策機関連絡協議会」を開催している。


拉致問題対策本部第1回会合(2013年1月)


拉致問題の解決に向けた方針と具体的施策pdf


菅内閣官房長官兼拉致問題担当大臣と拉致被害者御家族の面会(2018年10月)

2. 日本政府による捜査・調査

 日本政府は、北朝鮮による日本人拉致事案及び拉致の可能性を排除できない事案につき、帰国した拉致被害者からも累次にわたり協力を得つつ、徹底した捜査・調査を進めている。こうした捜査・調査の結果、これまでに12件17名を日本人拉致被害者として認定している。

 また、警察においては、朝鮮籍の姉弟が日本国内から拉致された事案1件(被害者2人)についても北朝鮮による拉致容疑事案と判断するとともに、北朝鮮工作員等拉致に関与した11人について、逮捕状の発付を得て国際手配を行っている。

 さらに、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案の捜査・調査については、2013年3月に警察庁外事課に設置した「特別指導班」による都道府県警察に対する指導・調整、御家族等からのDNA型鑑定資料の採取、警察庁及び都道府県警察ウェブサイトへの拉致の可能性を排除できない事案に係る方々の一覧表等の掲載など、その取組を強化して事案の真相解明に努めている。また、海難事案として処理されているものについても、警察と海上保安庁が連携を強化して、捜査・調査を行っている。

■ 拉致容疑事案関係の国際手配被疑者


3. 拉致問題に関する主な広報・理解促進活動

 2006年6月、拉致問題を始めとする北朝鮮当局による人権侵害問題(「拉致問題等」)に関する国民の認識を深めるとともに、国際社会と連携しつつ拉致問題等の実態を解明し、その抑止を図ることを目的として、「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」が公布・施行された。同法は、拉致問題等の解決に向けた国の責務のほか、拉致問題等の啓発を図る国及び地方公共団体の責務、北朝鮮人権侵害問題啓発週間(12月10日~16日)の創設及び同週間での国・地方公共団体の啓発事業の実施等を定めており、政府では、小冊子やポスターの配布のほか、拉致問題啓発映画やアニメの上映、各種研修会等への講師の派遣、北朝鮮向けラジオ放送(日本語・韓国語)、拉致問題啓発の舞台芸術公演等を行っている。特に、北朝鮮人権侵害問題啓発週間においては、政府やNGOは多くの会議、シンポジウム等を開催し、日本国内外に拉致問題等の解決を訴えている。


アニメ「めぐみ」


拉致問題啓発ポスターを全国に配布

4. 対北朝鮮措置

 2006年7月5日、北朝鮮は7発の弾道ミサイルを発射した。その後、北朝鮮は、国際社会の再三の警告にもかかわらず、2009年4月、2012年4月、同年12月にミサイルを発射し、2006年10月、2009年5月、2013年2月に核実験を実施した。また、2010年3月には、北朝鮮は韓国海軍哨戒艦に対して魚雷攻撃を行った。これらに対し日本政府は、厳重な抗議及び断固たる非難の意を表明するとともに、国連安保理決議に基づく対北朝鮮制裁措置に加え、我が国から北朝鮮への渡航自粛要請、北朝鮮籍者の入国の原則禁止、北朝鮮籍船舶の入港禁止、北朝鮮との輸出入禁止等の対北朝鮮措置を実施してきた。

 2014年5月の日朝合意に基づき、同年7月、日本側は、人的往来の規制措置並びに支払報告及び支払手段等の携帯輸出届出の下限金額の引下げ措置を解除するとともに、人道目的の北朝鮮籍船舶の入港を認めることとした。

 しかし、北朝鮮による2016年1月の核実験及び2月の弾道ミサイルの発射等を受け、同年2月、人的往来の規制措置、支払手段等の携帯輸出届出の下限額の引下げ措置、北朝鮮向けの支払の原則禁止措置、人道目的の船舶を含む全ての北朝鮮籍船舶及び北朝鮮に寄港した第三国籍船舶の入港禁止措置並びに資産凍結の対象となる関連団体・個人の追加指定を実施することとした。また、同年3月に採択された国連安保理決議第2270号に基づき、国連安保理の決定等により制裁対象として指定された船舶の入港禁止措置や資産凍結等の対象となる関連団体・個人の追加指定等の対北朝鮮措置を実施することとした。

 また、2016年9月、北朝鮮が同年に入ってから2回目となる核実験を強行するとともに、同年中に20発以上の弾道ミサイルを発射していること、また、拉致問題についても、一日も早い全ての拉致被害者の帰国を求めてきたにもかかわらず、いまだに解決に至っていないといった北朝鮮をめぐる情勢を踏まえ、同年12月、人的往来の規制措置を強化するとともに、北朝鮮に寄港した日本籍船舶の入港禁止措置及び資産凍結等の対象となる関連団体・個人の追加指定を実施することとした。加えて、同年11月に採択された国連安保理決議第2321号に基づき、資産凍結等の対象となる関連団体・個人の拡大措置等を実施した。

 さらに、北朝鮮は、2017年に入ってからも、3発のICBM級を含む17発の弾道ミサイルを発射したほか、同年9月には過去最大出力と推定される規模の6回目の核実験を実施した。こうした中、国連安保理において同年6月、8月、9月及び12月に国連安保理決議第2356号、第2371号、第2375号及び第2397号がそれぞれ採択され、これらに基づき資産凍結等の対象となる関連団体・個人の拡大措置等を実施したほか、我が国独自の措置として、同年7月、8月、11月及び12月に資産凍結等の措置の対象となる関連団体・個人の追加指定を実施した。